ビフォアー&アフター
ビフォアー&アフター Vol.2
左京区吉田 I邸
いにしえの「粋」を伝える建屋。しかし様々な問題箇所が…
登記情報から、明治末年頃に建てられたとみられる2階家です。大正11年実測の、京都最古の都市計画図にも、その姿とみられる描写があります。入り口が2箇所あり、小部屋が多く設けられているのは、かつて下宿屋として使用されていた名残。各部屋に床の間があり、木枠のガラス戸などと共に、いにしえの「粋」の如きを今に伝えるモダンな建屋です。
しかし、方々に長い年月の経過による劣化が見られ、更に、後の手入れの悪さから、それを取り繕った箇所にさえ見苦しさを感じる状態となっていました。
例えば、床。1階は床板自体が傷んで、弾性を持つような状態でした。全室畳敷きでしたが、全面ゴザで覆われ、共に傷んで見苦しい、居苦しいありさま。また、内壁も、それを覆った合板が古びて、同じく見苦しい状態にありました。他には、雨漏りや外壁トタンの剥がれ等の、問題箇所もありました。未来へと繋がる、にぎやかな生活拠点に
修繕は、趣あるガラス戸等を極力残すといった方針で行いました。実に様々な箇所に渡りましたが、主な修繕箇所とその成果は下記の通りです。
1F部分
浴室・台所 元は無かった浴室を新設しました。また、台所には土間床や広さを生かして、業務用の大型ガス調理器を導入しました。何れも、居住性や嗜好を考慮した施しです。
庭 庭を整理して、陶片タイル等を敷き、南面の利点を生かした明るくシンプルな雰囲気に仕上げました。
2F部分
吹き抜け 美観的考慮から、2階部屋の天井をとり、吹き抜けにしました。民家のものとは思えない、大きな梁構造が、飽きない趣を演出してくれるようになりました。
全体部分&その他
板壁 台所や2階の一部に新設した板壁には上質合板を採用し、柿渋や亜麻仁油等を用いた天然塗料により、木目を生かす仕上げを施しました。こうすることで、新材を用いた新設部分でも、古い空間と馴染ませることが出来ました。
階段 狭く、急斜が危険な階段を廃し、位置を変えて新設しました。その際、杉や檜等の天然無垢材を使用しました。階段本体は古い町家より出た良質の古物を調整して再利用。明るく、木肌の感触に満ちた、美観・機能性共に備えた設備として創造されました。
床 1階の床の傷みを補修し、思い切って畳を全廃し全室板床化しました。古い中にも、モダンな雰囲気を創出しました。
安全対策 安全対策としては、漏電ブレーカーを新設し、屋内配線を全て更新しました。また、台所では、趣ある土間床やコンクリートシンクを残しつつ、防熱用ステンレス板や換気装置を導入しました。
以上のような修繕を施し、明治築の古下宿屋は、未来へと繋がる住空間として生まれ変わりました。今では、家族や友人達が集う、にぎやかな生活拠点となっています。