街道沿いの大きな商家です。築年数不詳の古い町家で、八百屋さんが50年程ご商売をされていたといいます。恐らくは、それから更に時代が遡るものだと思います。

店舗用の改装を受けてから既に長い年月を経ていることもあり、やはり、傷み具合はかなりのものでした。土壁の劣化、屋根の雨漏り、建具の傷み等々……。特に建具には大きなネズミの齧り穴まで見られるような状態でした。また、店舗用増設部分が前面を覆っていた為、1階全体が薄暗い状態でした。

今回はそれらを改善し、これまでとは全く雰囲気の異なる町家カフェへの改装に挑戦することとなりました。

店舗用の改装、しかもカフェ用ともあって、またいつもとは違った労力が必要になりました。しかし、オリジナルの部材やその雰囲気を尊重するスタンスは変えていません。そうした状況のもとで行った主な改装箇所は以下の通りです。

1F部分

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駐車空間＆植込み　建屋前面を覆っていた店舗用増設部分を解体し、前面を広げ駐車スペースと植込みを設けました。植込みに配したのは楓（もみじ）。店からの眺めだけでなく、街の景観の一部ともなるよう意図しました。
床　玄関側2室を畳部屋から土間床の店舗スペース（客室）に変更しました。土間床はコンクリ引きを採用しています。中庭に面した和室は、そのまま奥の客室として整備しました。
全体部分＆その他

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土壁　2階の居住部分を含む、大部分の土壁を塗り直しました。一部には漆喰塗りを施しています。
屋根　 屋根や前庇の瓦の一部に見られたズレを矯正しました。
建具　オリジナル建具を修繕・調整・清掃して再利用しました。一部の障子には市松風に紙貼りしたオリジナルデザインを施しました。
柱　改修部分とのバランスや、汚損補修の為、柱の一部を塗装し直しました。
配管類　厨房機器の導入と、それに伴い配管類を更新しました。
店舗前面＆備品　テーブルや椅子の一部に、専用に設計した特注のオリジナル品を使用しました。店舗前面のガラス壁と店舗扉等も同様に処置しました。
水回り　洗面とトイレも現代生活に不便のない仕様に更新しました。
照明　照明にも工夫を凝らし、客席でのスポットライトの採用を始め、和洋を超えたモダンな雰囲気づくりに努めました。

以上のような改装を経て、写真にみるような斬新かつ、趣ある店舗が完成しました。限られた予算を有効に使い、沈滞気味だった街の一角に、見事、華を添えることが出来ました。