より住みよい現代的住環境を求めて転居された先住ご一家が、長らく倉庫代りに使用されていた2階家です。登記情報によると、昭和30年代頃の築とみられます。

数年間無居住だったせいか、各所に傷みが見られ、水回りの設備にも老朽化と時代遅れの使い難さが目立ちました。特に目についたのが台所。汚れたガラス窓が薄暗いそこは、漏水により天井が朽ち下がり、床も抜けんばかりの有様でした。現状ではやはり生活は困難―。先ずは、そんな感懐が胸をよぎりました。

しかし、路地奥ながら例外的に日当りが良く、フレーム等のその他はしっかりした物件だったので、要所を少し改善すれば、必ずよい姿で復活するとの確信がありました。それは、正にこれまでの修繕で培った、「経験」と「勘」による判断が働いた瞬間でもありました。

修繕は、現代的な暮しが可能であることを目標として、要所に絞って施しました。その、主な修繕箇所と成果は下記の通りです。

1F部分

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台所　傷んだ天井合板を外し、その原因であった天井裏の水道配管の水漏れを修繕しました。その際、古い配管の交換も行いました。そして汚れ朽ちていた窓を撤去し、窓枠共々新調。ガラスは耐熱性を考慮してポリカーボーネイトに変更し、採光面積を稼いで自然光量を増加しました。傷んだ床は撤去し、隣の2畳間共々、無垢材張りの板間にして広さと使い勝手を向上しました。また、元々なかった換気扇をダクト露出式で新設し、ガス台壁面に新設されたステンレス板と共に瀟洒な感じを創出しました。コンクリートの流し台・ガス台は清掃・塗装し、レトロな味わいを活かしつつ、新設の自動給湯器に接続された新たなカランにより、現代生活との整合を実現させました。
和室　畳の表替えを行い、新築同様の、気分良い空間を実現させました。
階段　蒸気洗浄機等による念入りな清掃を行い、オイルステンで落ち着いた古色に仕上げました。
脱衣所・浴室　先ずは腐っていた脱衣所の床を撤去し、無垢材の板間としました。そして浴室の戸を枠ごと新調しました。戸は現代的で扱いやすい折れ戸を採用。また、戸の浴室内対面にも開閉式の大窓を新設しました。それには、台所と同じくポリカを採用し、採光性向上を図ると共に安全性にも配慮しました。そして剥落が目立った浴室壁は思い切って剥がし、モルタルを再塗布。左官名工土橋氏の手塗りにより、半円状のユニークな天井を持つその魅力が新たにされました。そしてその上を防水塗装。また、防水電灯と換気扇の設置、そしてカランとシャワーの新設で、現代生活にも完全対応させました。最後は、壊れていたバランス釜を撤去し、浴槽をカラン給湯対応式に改造しました。

2F部分

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板間　剥落の激しかった土壁を塗り直しました。施工はやはり土橋氏。垂直の広壁に施されたその水平さと精緻さに驚くばかりです。そして、古く見苦しい壁紙が貼られていた奥の壁を塗装により改良しました。また、2階外壁にあった老朽化した室外機を、同じく古くなった台座共々撤去。他には、割れのあった建具のガラスを交換し、合板床を天然塗料「柿渋」にて古色塗りしました。
トイレ　割れのあった便器を交換しました。その際、配管も交換。水タンク関係の部品も交換し、完全なる使用可能環境に復しました。

その他＆全体部分

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電気系統　 旧式の安全器類と全電気配線を更新しました。そして、コンセントの増設や、照明スイッチの設置も同時に行いました。これで、電気容量や事故の心配なく、安心して電化品を多用する現代生活を営めるようになりました。
塗装　脱衣所や台所の板間には仕上げとして、高級天然保護材である「蜜蝋ワックス」を使用。また、古くも趣ある木製窓と、その窓枠には同じく天然防腐塗料「柿渋」を塗布しました。
その他　以前お子さんがおられた為か、全家的にシール貼りが多く、柱や建具に見苦しさが見受けられました。その為、全体清掃の折に蒸気洗浄機にて剥離を施しました。また、古釘の打付けも多かった為、こちらも可能な限り、抜き取り対応を行いました。

何かと大変ではありましたが、こうして古いながらも現代生活に適った物件に再生することが出来ました。