町家で読書
町家に住むと本が読みたくなる。- 秋編 -
つぶやき岩の秘密
新田 次郎
新潮社(新潮文庫)/ 515円
夏の終わりの岬で怪しい老人を目撃した事から事件に巻き込まれてゆく少年の通過儀礼譚。そこに影を落とすのは戦争の記憶と大人の思惑。NHKの少年ドラマシリーズの原作としても有名(主題歌は石川セリ)。大切な感情を「追憶の片隅でそうっと溶けてしま」わせない為にも是非、一読を。
愚者が出てくる、城寨が見える
ジャン=パトリック・マンシェット
光文社(光文社古典新訳文庫)/ 580円
「もう秋か」と記した詩人の一節をもじった題が素敵過ぎるインテリ・ヤクザな暗黒小説。誘拐されたエエ所のボンと世話係の女性が繰り広げる逃走劇なれど登場人物全員ガイキチ。極限まで削ぎ落とされた文体で紡がれる殺戮は半端無し。残念な時代&狂った人生のお供に最適なSuper Cool本。
天体による永遠
オーギュスト・ブランキ
雁思社/ 2,415円
逢魔ヶ刻or満点の星空を見上げて「私は何か?何をしているのか?」という問いに襲われたら本書(生涯の大半を監獄で過し、娑婆でも畏怖された革命家の宇宙論)を。ひたすら「今」だけを信じて行動したニーチェを凌ぐ侠気充満。生涯黒ずくめのダンディに相応しい造本がCool。解説も熱い!
三人の乙女たち
フランシス・ジャム
岩波書店(岩波文庫)/ 693円
世紀末仏の退廃/象徴の腐臭漂う中、忽然と清澄の調べで登場した詩人の短編小説集。南仏の自然を背景に、三者三用に美しく、清らかな乙女達の愛と生が散文詩の様に綴られて行きます。最後に登場するポム・ダニスの話は切な過ぎて、晩秋の午後に読もうものなら涙止まらない方もあるかと。