町家で読書
町家に住むと本が読みたくなる。- 春編 -
月山・鳥海山
森 敦
文藝春秋(文春文庫)/ 610円
一冬を月山の麓の荒れ寺で過ごす男のお話。淡々とした語り口に誘われ読者は生と死の境/幽冥境を垣間見ることに。モノクロームな雰囲気の中に一瞬現れる女性とのやりとりも印象的。春の訪れと共にやって来た友人と共に主人公は寺を離れますが、読者は幽冥境から暫くは逃れられないかも。
スーフィーの物語 - ダルウィーシュの伝承 -
イドリース・シャー編 美沢真之助訳
平河出版社/ 1,890円
春の陽気と新生活のアレコレで微妙に心が弱ったらこの本。82編の極々短いお話は何処から読んでも良し。パラパラと拾い読みする内に天啓キタ!となるやも。読み返す度に示唆が得られる人生の教科書的一冊(騙し無し)。本邦初紹介は自販機本「ヘヴン」。訳者/隅田川乱一のライフワーク。
蔵の中・鬼火
横溝 正史
角川書店(角川文庫)/ 絶版
春の午後、物憂く何もやる気がない時などに縁側や布団の中でダラダラしつつ、爛れた妄想に耽るのもオツですが、そんな時のネタに格好な一冊。特に『蔵の中』は程良い長さの内に和製ゴスとでも言えそうな感覚が漲っており良いカンジ。「晩春の陽を吸って的轢と」光る血溜まりの美しさ。
新編 燈火節
片山 廣子
月曜社/ 1,680円
穏やかで気品溢れるエッセイを旧かな復刻。仄かに漂う諦念と喪失感がミソ(ガーリー扱いで消費するのは罪深い)。『過去となったアイルランド文学』の末尾「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」からの一節に無感動な人は廻れ右(或いはFuckin' shit)。