町家で読書
町家に住むと本が読みたくなる。- 冬編 -
星三百六十五夜 冬
野尻 抱影
中央公論新社(中公文庫)/ 620円
稲垣足穂逝去の五日後に亡くなった在野の星博士が綴る星日記/エッセイ集。東山の空に揃うオリオン、すばるを讃える建礼門院右京大夫(12/1)から始まり、ハムレットで終わる(2/28)冬の巻。薄手の本ですが星々と宇宙の無限へと誘う好内容。夜のお出かけの供、鞄やコートに忍ばせるのも◎
夜の果てへの旅 (上・下)
L-F・セリーヌ
中央公論新社(中公文庫)/ 上・880円 下・980円
ボンクラ医学生の主人公はひょんな事から従軍の羽目に。その後も続くどん底放浪生活の行き着いた先はパリの場末での医者開業。社会底辺を蠢く有象無象と世界への罵詈雑言が織り成す異様な律動を巧みに掬い取る訳文にも注目。冬の旅、夜の旅のお供に是非。目を閉じれば人生の向こう側。
ならずものがやってくる
ジェニファー・イーガン
早川書房/ 2,520円
AB二部構成の内に13の物語を配置するLPレコード似の本。「分相応の生活」からこぼれ落ちてしまった有象無象の物語が「音楽/時」を通奏低音として紡がれて行きます。読後、読み手自身の過去-現在-未来への愛惜-肯定-希望の感情を重ね合わせずにはおれなくなる優しくも渋い味わいの一冊。
本の透視図
菅原 孝雄
国書刊行会/2,625円
季刊「思潮」、牧神社、平井呈一、この連なりに、ピンときた人は即購入すべし。出版業界で浮沈の後、デジタル・メディア黎明期に関わった著者による理系風味の文系本&白鳥の歌。先の固有名に馴染みが無くとも21世紀の紙/電子本の行く末に興味がある方は(極めて示唆に富む故)必読かと。