住人十色 4
人形作家、町家で陶芸工房
にしお氏
日常の一こまをとらえたような、どこがメルヘンチックな粘土人形。「おるがん社」を主宰する、にしおゆきさん(33)はここ数カ月、各地で次々と個展を開き、作家活動がいよいよ本格化してきた。
昨年6月から構える工房は意外に簡素だった。1階の6畳間で机状に小さな粘土板を置き、土をこねる。
「車がないので、自転車で搬入出来るサイズをと」手ごろな大きさの作品いつしか定着した。
陶芸を志す者にとって、窯の確保は何にもまして重要という。広い実家がある者は実家につくるか、あるいは窯業会社に入るか。窯はコストも場所もとるが、古い民家なら坪庭や土間に設置できるケースもある。
にしおさんは、借家で電気窯を構えながら、東寺の弘法市 に出展してきた。
自宅で作り、1人で売る。独自路線からは、いけばなの剣山として使える穴のあいた球形の陶器「花の玉」など定番の品も生まれた。ただそこからどうやって食べていくかは教えてもらえない。
一昨年、知人のつてを頼り愛知県の窯業地帯、常滑に駆け込んだ。「君が作っているものを10秒で作ってみせよう」。滞在先の会社社長が型枠で人形づくりを実演したとき、ショックを覚えた。
型枠と言っても原型を作るだけで、ひとひねりすれば腕や服、顔、みな違う。「1人でやっているうちに、考えが狭まっていたと気づいた」。分からない時は人に尋ねる。数をこなす方法、販売、いろいろなノウハウを学んだ。
「でも一番大きかったのは、それまでのスタイルでいいと分かったこと」決まった制作の「型」などない。
京都に戻るや、坪庭に電気窯を構え、友人たちの助けで、畳を板に張り替え、坪庭に屋根を張った。
風通しがいい古い木造住宅の味は、作品の風合いにも通じるよう。夫との2人暮らしで再開した。「自宅兼工房」は忙しくも充実の日々だ。