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住人十色 10

改装町家でレトロバイク店 “サカイクロン”

境氏

町家の中に並ぶオールドバイクたち。一見、昔ながらの店のようでいて、部屋の上にバイクが上がり込んでいる様子に衝撃を受ける。一台一台に対する並々ならぬ愛着を感じさせる。

中古バイク店「サカイクロン」は昨年末、境和重さん(32)が山科区内から移転、店を構えた。境さんが扱うのは1960、70年代の国産バイクと、デザインが人気のイタリアのバイクなど。開業3年、知り合った客が市の中心部に多く、「碁盤の目の中で暮らすことへのあこがれもあって」引っ越した。

まちなかで安く借りられる広い場所、それが町家だった。借りた家は敷地が50坪あり、裏手の離れも倉庫として使用。現在、30台以上をストックする。

特に町家を希望していたわけでもなかったが、「60年代製の茶色のバイクをぽんと置いたら、すごくしっくりきて驚いた」。古い家と古いバイクが出会った瞬間の思いがけない共鳴。

店を開くにあたり、境さんは、屋内で後の時代に取り付けられていたパネル天井や板壁など「見た目にも安っぽい」要素を取り払い、建築そのものの味がわかるシンプルな室内にした。

全国にファンがいるというオールドバイク。「部品を交換しつつ直して乗るのが中古バイクの楽しみ」という境さんの原体験は、小学生の時ごみ捨て場に置いてあったバイクのアクセルを踏んだらエンジンがかかったこと。動くことに興奮し、それ以来、バイクいじりにとりつかれてしまったという。

中古品はよく故障するというが、その故障も「味」としてつきあえるようになればしめたもの。

「大事に使えば一生つきあえる」と境さんは言う。修繕しつつ住み続ける町家と、何十年も使い続けるバイク。両者の姿が見事に一致している。

町家に1960~70年代のバイクが並ぶ「サカイクロン」店内。手前の作業スペースは、土間と同じ高さに作りかえ、奥の部屋も板張りに改装した。屋内の空間を覆っていた天井パネルや仕切りをとりはずし、見た目にも簡素になった。
街路に面した町家の前に並ぶバイクと仲間たち(上)。オールドバイクに修理は欠かせない。バイクの部品はマニアから取り寄せる。作ることもあるという。
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