住人十色 20
機織家の郊外平屋
瀧本氏
緑の垣根が取り囲む表庭、広いテラスの平屋には秋の日差しが陽り注いでいた。京都のまちなかでは望めそうもない間口の広さ。瀧本香織さん(26)は、この貸家に機を置き、念願の機織りを始めた。
築30年以上たった借家は、老朽化して借り手がつかない状態が続いていたという。ところが、4年前に建築家の門脇哲也さんと田中千尋さんが改築を進めた。部屋が小分けされていた間取りを一体型に変え、畳を板張りに。内装は白く塗り替えた。今年3月、門脇さんらが、向かいの元クリーニング工場に引っ越した(前回に掲載)ため、新たに住人を探しだところ、ほどなく瀧本さんが入居した。 住人による自由な改装が、次の住人を呼び込んだ。
瀧本さんは大学時代に染織・テキスタイルを学んだ。昨年8月、バイト先で偶然、織り機をもらい受けた。「機織り機は買うと何十万円もするのでラッキーだった」という。が、当時住んでいたアパートの2階では、音や振動がするので使えない。また織る糸を伸ばすため、広いスペースも必要だったため、一軒家を探していたという。
「京都を出るの」と言われたが、JR駅からは歩いて5分と、交通は意外に便利。何よりも広さが魅力だった。機織りは、計画段階が大事という。どのようなデザインにするか、プランを練るのに知恵を絞る。途中での変更はきかないため、作業に入ってからは淡々と作業に没頭する。機械織りもあるが、「そうなるとプランを立てることだけが仕事になる。手で動かすのが好き」。
手作り感あふれる住宅での制作は、おだやかな空気をテキスタイルに織り込むだろう。「まだ試行錯誤の段階ですが、いつかは個展を」と夢を膨らませる。
瀧本香織さんが住んでいる平屋の貸家。部屋の障壁などが取り払われ、不思議な空間になっている。以前住んでいた建築家の門脇哲也さんと田中千尋さんが改築を行った。
部屋に置かれた機織り機。
ほのぼのとした雰囲気がただよう、テラスと生け垣のある平屋の家。