住人十色 22
町家でルームシェア(共同居住)&アトリエシェア
風情ある石畳の路地を入ると、つきあたりに、黒い板張りの木造家屋。秋の日差しは意外と明るい。杉板の床、木枠を使った広い窓ガラスは、現代のシンプルな木造デザインというべきか。
7年前から空いていた借家を直したと、住人の明石依子さん(26)は言う。この住宅は明石さんの実家が所有しているが、老朽化して、借り手がつかなかった。そこで一昨年、明石さんが京都造形芸大を卒業したのを機に、同級生の設計士、中西英樹さん(25)に修繕を依頼、半年がかりで共同リビング、アトリエへと模様替えしたという。 居室は3部屋あり、1つは明石さんが住み、残りの2部屋を貸し出している。
最近、住人が入れ替わった。明石さんの同級生、米田雪貴さん(25)は先月、約2年半ぶりに京都に戻った。長野県の実家にいたが、田舎暮らしのせいか、制作を続ける油彩画が、だんだんのんびりとした作風に変わってきたという。「どうも違うなと。大学のころの感じを取り戻したかった」。実家に戻ったのは描く場所を確保するためでもあったが、この下宿には共同で使えるアトリエがあるのが頼りになった。
一方、10月に入居した紀伊宏美さん(19)は京都精華大でデザインを学ぶ1回生。入学後は下宿生活をしていたが、「共同生活をしている人の話を聞き、興味を持った」という。「人と暮らすと、新しい発見がたくさんあるし制作意欲を触発される」と喜ぶ。3人で、時間が合えば食事を作ったりすることもしばしばだという。
ここは京都市の中心部、祇園祭の山鉾町。明石さんは北隣の中京区出身だが、世の中がバブル期だった富有小時代、同学年はわずか20人だったという。バブルが崩壊してはや十数年。マンションでもなく、街の形はそのままにして住むスタイルが、若い世代から起きつつある。