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住人十色 23

昭和モダン、伝説の洋館 “銀月アパートメント” 上

琵琶湖疏水分流沿いの閑静な住宅街に、ひときわ存在感を放つ白壁・瓦ぶきの木造洋風建築。「銀月アパート」は昭和初期築造の「骨とうアパート」だ。

壁の一部ははがれ、看板の字ははげ落ち、いかにも年代を感じさせる。ところが、「最近、若い人が次々と住み着くようになった」と管理人の荒賀こずえさん(38)は驚く。北、南2棟のアパートの住人は20人を超え「満室」状態。10年前は空き部屋が目立っていたというが、何かが変わってきたのだろうか。

京都造形芸術大3回生の吉田祥平さん(23)と、京都市立芸術大3回生の来田猛さん(23)の2人は今年5月から、北棟1階の4畳半の部屋で共同生活する。高校時代、美大受験で知り合った2人だが、昨年、久しぶりに会ったところ、両者とも写真を撮っていることで意気投合した。

当初は、共同の現像室にするつもりで借りた。だが、寝袋で一夜を過ごした翌朝、中庭ごしに届いた光が、「あまりにもいい感じだったので、住むことにした」と来田さんは言う。とはいえ、家具や生活用具は最小限に。

夜、友人を呼んでは照明を薄暗くした部屋でえんえんと議論。できたての作品を壁にはると、すぐに批評会。「ここに住むようになってから自然な感じで撮れるようになった」と吉田さん。自分独自の写真表現を求めて、切磋琢磨の日々だ。

一方、三喜亜子さん(31)は、2階の東南角の一室を先月から借り、ステンドグラス制作の工房にしている。「ガラスには自然光が欠かせない。この部屋の光の当たり方は最高」と喜ぶ。もともと古い建物が好きで「つるんとした空間は好きになれない」という。静かな部屋は「すごく集中できる」と、制作に没頭できる環境に満足する。

明るい昼間の光と、夜の闇の両面をあわせもつ建物は、まちなかにのっペリした空間が増えるなかで、独特の魅力を放っているようだ。

独特の存在感がただよう「銀月アパート」全景。昭和初期の築造で、映画監督の大島渚が学生時代に住んでいたとも。右側に写るシダレザクラも近所の「名物」。
四畳半の部屋にソファーが一つ。共同生活する吉田祥平さん(右)と来田猛さん(左)は写真家を目指して切磋琢磨の日々。
南棟の一室は三喜亜子さんのステンドグラス工房に。丸窓には自作のステンドグラスをはめた。
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