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住人十色 25

企画「住人十色とは何だったのか?」座談会1

~京都で空き家となっている建物に価値を見いだす~

昨年1月から始まった連載「住人十色」は1年間にわたり、京都で空き家となっている建物に価値を見いだし生活する人たちを紹介してきた。まとめとして、こうした「住」の意義や、そこから生まれるさまざまな可能性について、住人である造形作家と、建築、物件紹介にたずさわる3人に語り合ってもらった。

― ひと昔前なら、住み手がいなかった空き家を作りかえたり、複数で住んだりする動きが目立ってきている。

平野 京都にいる若手芸術家の存在が大きい。いま芸術家にとって、発表の場は、メディアが集まる東京が圧倒的。しかし、作品をつくる場所としては、家賃を含めてお金がかからない京都が適しているのではないか。京都は空いた建物がまちなかに残っている。そこにアーティストが住み込んだという流れがある。電器店、染織工場などを作り替えて住むのは文化的なことだと思う。個人個人が勝手にやって、気がついたら面としてのまちができていたというのが、いいまちの形成では。

森田 日本は戦後ずっと、必要な建物は新築してまかなってきた。それがひととおり行き渡り、飽和状態にあるのが現在。今では、あるものをどう使うかに発想が転換しつつある。

向後 家はふつう、住むところであって、動かせないと思うけど、勝手に改造してもよいとなると、それも一つの「作品」になるかもしれない。すると制作熱がうずく。いま僕が住んでいる家は最初に見た時は傷んでいたが、逆に「直して住もう」という気持ちをかきたててくれた。少年時代に、おじいさんが納屋で機械いじりをしていたのを横で見て育ったので、そのときの記憶を思い出し、自分の場所かなと感じた。

森田 古いものを使い回すことは、価値がなくなったものに新たな価値を見いだしていく作業。千利休を思い出すが、利休はお金をかけた茶道具をやめて、そこらへんに落ちているようなもので茶をいれ始めた。それど同じことをやっているのだと思う。

平野 今の物件の選び方は、築年数とか「駅近」とかの尺度しかないが、ちょっと見方を変えれば面白さが広がる。僕は25歳の時に路地奥の古い住宅をローンを立てて買った。自分で壁を塗りかえ、床を張ったが、これが面白かった。これなら、ほかにも面白いと思う人がいるだろうと確信した。自分で住む場所を作る楽しみは、余っている空間の多い京都ならでは。

森田 かつては新築でないと建築家の仕事として認められなかったが、この4、5年、建築の世界でもリフォームが注目を集めるようになってきた。

向後 「制作の場」以上に、気分を楽しむという面もある。精神的な空間、イメージしている世界を作って楽しむことに近い。でも最近、寒さが厳しいので、次の冬までには断熱を補強したい。

森田 デメリット以上に、圧倒的に安いとか、広いとかの長所がある。自由に手を加えられる楽しさもある。

参加者(50音順)
造形作家
向後 聖紀

住居プロデューサー
平野 準 (サイト注:ルームマーケット代表)

建築家
森田一弥
「住と創造」の場を京のまちなかからつくりだすだす可能性を語る(右から)向後さん、森田さん、平野さん。
向後さんが改造した家。手前側の部屋の床をはがし、コンクリートで固めて紙すきができる土間に。家の古畳はそのまま紙すきの原料に(2004年6月撮影)。
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