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住人十色 26

企画「住人十色とは何だったのか?」座談会2

~マンションと空き家などに住む違い~

― いわゆるふつうのマンションに住むのと、空き家などに住むのはどこが違うか。

森田 マンションに住む人は、町内会も疎遠で、地域から切り離されがちだ。祭りにも呼ばれなかったりする。だけど町家に住んだら学生だろうが何だろうが、回覧板が回ってくる。運動会に出てくれとか、祭りに出てくれとか。

向後 僕のところには空き家だと思われているのか、回覧板が飛ばされています。最近、大学に入り浸っていて。

森田 古い家は何かと手間がかかる。車にたとえれば、何も故障のない新車に乗るのか、味のある中古車に乗るのかの違い。「故障が楽しい」というノリ。

平野 面白いことに、新しい物件に住む人のほうが苦情が多い。この前、マンションに入居した京大生から「電気がつかない」と店に電話があった。スタッフが行ってみると、電灯のソケットがはまってないだけだった。

森田 自分で何とかするという意気込みが大事。古い建物に住む人は、覚悟ができている。

向後 家が古くて困ったことといえば、ネコが勝手に入って来たこと。僕の前に住んでいた人が、ネコが通れるように、扉にネコサイズの穴が削られていた。僕はネコアレルギーなのに、朝起きるとふとんの上にネコがいたりして困った。あと、道路に直接面しているので、路上の音もけっこう入って来る。

― 木造以外でも、京都ではいろんな空き家の活用がみられる。

森田 ホームセンターと従業員寮の建物をギャラリーと生活空間に変えた「マズプログラムスペース」(京都市左京区=写真参照)は驚いた。

平野 2、3階の部屋の賃貸で収益を上げて、1階でギャラリーを運営する。グループ4人で運営を「やります」と言ったのはすごいと思った。

森田 この建物を見て何かできるかという見立て、想像力が一番重要。

平野 こんなところから世界的アーティストが出るかもしれない。

向後 大学院を修士でいったん出て1年間、バイト生活をしていたとき、住む場所が変われば、気持ちも変わるのかなと思った。自分が「普通じゃない人」ということを確認していないと、作家という気分が出ないんじゃないかなと。住む場所というのは主張であって、自分自身にも暗示をかけているところがある。僕は古い家に住んだのは、紙すきから離れたくないという恐怖心があったかもしれない。

平野 「町家ブーム」で京都に来る人は、イメージだけで来ている人も多い。住んでから「本当にあなたがその家を『料理』できるのか」が問われる。

森田 建物はこわいもので、「こう住みなさい」という暗黙の決まりに、往む人は知らず知らずのうちに従ってしまう。町家に住みたいというのも2種類あって、メディアのイメージに合わせて「町家らしく」住むのは案外きゅうくつなのでは。自分で「こういう住み方がしたい」という思いがあって、その受け皿として、町家があったり倉庫があったりすると、住まいも自分も生かされることになる。

平野 芸大出身者に限らず「町家に住みたい」という人は多い。でも、物件を紹介すると、ユニットバスにがっかりするとかで、契約まで行き着く人は少ない。アーティストの人は、そんなところにはあまりこだわらない。アーティストの考えを、もっと外に伝えていくことも重要だ。

参加者(50音順)
造形作家
向後 聖紀

住居プロデューサー
平野 準 (サイト注:ルームマーケット代表)

建築家
森田一弥
元ホームセンターの店舗兼従業員寮だったビルを、企画展ができるギャラリーと住居に再生した「マズプログラムスペース」(京都市左京区)は、美術関係者の間でも知名度が上がる。
向後氏
森田氏
平野氏
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